テレビやインターネットなどで、歯列矯正のCMを見たことがある方もいるのではないでしょうか。
2022年の厚労省が発表した調査を確認すると、平成29年の初診の矯正患者数は1日あたり800名だったことに比べ、令和2年では2,900名となっています。初診の矯正患者数が3倍以上に増えている調査結果が明らかになりました。世間的にみても、歯列矯正に興味を持っている方が増えているとわかります。
今回は、大人の歯列矯正について解説します。大人の歯列矯正のメリット・デメリット、注意点や種類も解説するので、ぜひ参考にしてください。
目次
大人になってからでも歯列矯正はできる?
歯列矯正と聞くと、乳歯から永久歯に生え変わる学童・学生のタイミングで行うというイメージがある方もいるかもしれません。
しかし、大人になってからでも歯列矯正は可能です。近年では、中高年期に歯列矯正を受ける方が増加傾向にあります。
歯列矯正を希望される方の多くが、歯並びの見た目の改善を希望しています。次いで希望するのは、噛み合わせを改善することによる健康維持です。
40〜50代で歯列矯正を希望する方も増えているので、興味がある方は一度歯科医院に相談するとよいでしょう。
大人の歯列矯正のメリット
「歯列矯正をする=歯並びの見た目を美しくする」というイメージをお持ちの方が多いかもしれませんが、歯列矯正のメリットは幅広いです。
大人が歯列矯正をするメリットを具体的に確認しましょう。
咀嚼機能を改善できる
歯列矯正は、不正咬合や歯並びの問題を修正するための最も効果的な方法です。歯を正しい位置に配置することで、噛み合わせがよくなり咀嚼機能が向上します。
噛み切れないと感じていた硬い食べ物を噛めるようになり、栄養状態の悪化を防げるでしょう。
首こりや肩こりを改善できる
歯並びが悪いと、咀嚼の際に過剰な負荷が筋肉にかかり、首こりや肩こりの原因になります。歯列矯正で噛み合わせを整えることは、首こりや肩こりの改善にもつながります。こりが原因の頭痛の改善にも効果的です。
自信を持ってコミュニケーションを取れる
歯列矯正をして歯並びを整えることで、自信がつくことがあります。歯並びが整っていないことで自信を失い、人前で笑うことができなくなる方が少なくないのです。
歯列矯正を行うことで、美しい笑顔を手に入れられるでしょう。自信を取り戻すことができ、人とのコミュニケーションを楽しめるようになるかもしれません。
口腔疾患を予防できる
歯並びが悪いと、歯と歯の間に歯磨きやフロスで取れない歯垢が溜まりやすいです。除去できなかった歯垢は歯石となり、虫歯や歯周病などの口腔疾患のリスクを高めます。
歯列矯正によって歯並びを整えれば、歯磨きやフロスの効果を最大限に引き出すことが可能となります。正しい歯並びにすることは、見た目の美しさだけではなく、口腔疾患のリスクを低減することにもつながるのです。
呼吸や発音を改善できる
滑舌が気になる場合、歯列矯正で改善できる可能性があります。歯並びが悪いことにより、呼吸や発音の障害を引き起こすことがあるためです。
顎の位置や歯の配置を正すことで呼吸の流れを改善し、明瞭な発音を実現することができます。
大人の歯列矯正のデメリット・注意点
歯列矯正を行うことによるメリットをお伝えしましたが、どのような治療にもデメリットや注意点があります。
経済的な負担が大きい
歯列矯正治療には、非常に多くの費用がかかるのが一般的です。総合的な治療計画や装置の種類、治療期間などによって費用は異なりますが、数十万円から数百万円の費用がかかることが多いでしょう。
誰でも手軽に試すことができない治療といわざるを得ません。
治療期間が長い
歯列矯正は、長期に渡ることが多いです。装置の種類や治療の複雑さによっては、5年程度かかることもあるでしょう。矯正治療中は、矯正の状態を適切に確認するため、定期的に歯科医院に通院しなければなりません。
痛みや不快感が生じる
歯列矯正は、一般的に痛みや違和感、不快感を生じます。歯の痛みは、頭痛や生理痛よりもつらいと感じる方もいます。日常生活に支障をきたすほど痛い場合は、我慢せずに歯科医師に相談して薬を処方してもらいましょう。
装置が口腔内に存在することで、口腔内全体に違和感を生じることもあります。
食事に制限がかかる
歯列矯正中は、食事や飲み物の制限が必要な場合があります。また、矯正装置の取り外しや清掃のために、日常生活に制約が生じることもあるでしょう。
特に、ワイヤー矯正の場合、外見への影響が非常に大きいです。口腔衛生の維持に努力が必要になることもあります。
大人の歯列矯正の種類
大人の歯列矯正にはいくつか種類があります。主な歯科矯正の方法をご紹介しますが、ご自身の症状や状況に応じて最適な方法を選択することが重要です。歯科医師と相談しながら、ご自身に適した治療方法を選択しましょう。
それぞれの特徴、メリット、デメリットもご紹介するので、参考にしてください。
ワイヤー矯正
最も一般的な歯列矯正方法です。歯にブラケットとよばれる小さな装置を取り付け、ワイヤーでつなげて歯に矯正力をかけます。歯の表側に装置をつけるため、表側矯正ともよばれます。
ワイヤーを定期的に調整し、歯を正しい位置に導くのです。非常に歴史が長く、幅広い症例に対応できる治療方法です。
ワイヤー矯正は比較的強い力をかけられるので、複雑な歯並びも矯正できます。取り外すことができないので、自己管理の必要がありません。
表側にブラケットやワイヤーを装着するため、見た目に影響を与えることがデメリットでしょう。ブラケットやワイヤーが粘膜に触れることで、口内炎が起こる場合もあります。
また、ワイヤーを調整する際に強い痛みを感じやすいです。
裏側矯正
裏側矯正は、ブラケットやワイヤーを歯の裏側に装着する方法です。通常のワイヤー矯正と同様に、金属製のブラケットとワイヤーを使用して歯を移動させます。
メリットは、ブラケットが歯の裏側に取り付けられるため、見た目に影響がないことでしょう。
デメリットは、ブラケットが舌側にあるため発音のしづらさを感じることです。食事のしにくさを感じる方もいます。
歯の裏側は複雑な形をしています。表側矯正と比較して高度な技術が必要なため費用が高く、行っている歯科医院が少ないこともデメリットといえるでしょう。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、透明なマウスピースを1日20時間以上装着して歯並びを整える方法です。通常1〜2週間ごとにマウスピースを交換し、理想の歯並びを目指します。
メリットは、マウスピースが透明なため、ほとんど目立たないことです。使用するマウスピースはご自身で取り外せるので、食事や歯磨きがしやすいこともメリットでしょう。
ワイヤー矯正ほど強い力をかけないので、痛みや違和感が比較的少ないとされています。また、金属アレルギーの方でも安心して治療を受けられます。
デメリットは、重度の歯並びの乱れには対応できない可能性があることでしょう。複数本の抜歯を伴う症例は、治療できないことが多いです。
比較的弱い力で徐々に歯を移動させるので、同じ症例を治療する場合はワイヤー矯正よりもマウスピース矯正のほうが治療期間が長くなる可能性が高いです。
まとめ
今回は、大人の歯列矯正について解説しました。大人の歯列矯正には、咀嚼機能を改善できる、首こりや肩こりを改善できる、口腔疾患を予防できるなど、さまざまなメリットがあります。
経済的な負担が大きいことや、治療期間が長いこと、痛みや不快感が生じることなどがデメリットです。
大人の歯列矯正には、大きくわけて3つの種類があります。ご自身に適した方法を選択し、理想の歯並びを目指しましょう。