透明なマウスピースを使用して目立たず矯正治療を進められることから、インビザラインが注目されています。「インビザラインで抜歯した」と聞き、痛みや出血など不安に思う方もいるでしょう。
今回は、インビザラインで抜歯をするケースや抜歯のメリット・デメリットをご紹介します。インビザラインを検討している方や、抜歯の必要性に疑問がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
インビザラインで歯が動く仕組みとは?
インビザラインでは、ワイヤーやブラケットなどは使用しません。歯と歯茎全体を包み込むマウスピースと、歯の動きをサポートする補助器具を使って歯を動かします。
インビザラインはワイヤー矯正と異なり、一度にかける圧力が小さいです。痛みや違和感が少ないことがメリットでしょう。
圧力で無理やり歯を動かすというイメージを持たれることも多いですが、正確には圧力を加えて顎の骨の吸収と再生を促し、歯を移動させます。無理やり動かすのではなく、人に本来備わっている再生機能を人為的に引き起こしているだけなのです。
インビザラインのメカニズム
作られるマウスピースともともとの歯並びには、0.25mm程のずれがあります。1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換し、ずれによる圧力をかけながら少しずつ歯を正しい方向に動かすのです。
歯には、歯茎から出ている歯冠と、歯茎に埋まっている歯根があります。歯根と顎の骨の間には歯根膜という薄い膜がありますが、矯正治療において非常に重要な組織です。
歯冠に圧力がかかると歯根が引っ張られ、引っ張られた側の歯根膜は伸びて厚みが増します。
押された側の歯根膜は縮みます。
歯根膜にはもとの厚さに戻ろうとする性質があるため、厚みが増した歯根膜はすき間を埋めるように新しい骨を作り、縮められた側は骨を溶かしてもとの厚さに戻るのです。
インビザラインでは、マウスピースと補助器具を使って歯に圧力をかけ、骨の再生機能を誘発して歯を動かしています。
インビザラインで使用される補助器具
インビザラインでは、補助器具を併用する場合があります。
使用されることが多い補助器具は、以下のとおりです。
アタッチメント
アタッチメントとは、歯の表面につける歯と同色の樹脂でできた補助器具です。アタッチメントは、マウスピースをしっかり固定する、歯にかける圧力を調整するために使用されます。
マウスピースはもともとの歯並びから数mmずれて設計されているため、マウスピースが歯と密着せず浮くことがあります。アタッチメントは、マウスピースを浮かないように固定するフックのような役割を果たすのです。
歯の上下移動や、回転移動など3次元的に細かく圧力をかけて歯を動かす場合にも役立ちます。歯にかかる圧力を少しずつ調整するだけでなく、かかる圧力を部分ごとに強めることも可能です。
アタッチメントは歯を大きく動かす場合に使われることが多く、矯正の成功に重要な補助器具といえます。
顎間ゴム
顎間ゴムは、マウスピースもしくは歯の表面に取り付けられたボタンにかけて使用する補助器具です。ゴムの縮む力を利用して、より強い力をかけて歯を動かす場合に使用します。
例えば、上の歯と下の歯に垂直にゴムをかければ、縦方向に力が働き噛み合わせを改善できるでしょう。
顎間ゴムは、主に噛み合わせの調整に使用され、引っ掛ける方向を変えることで出っ歯(上顎前突)や受け口(下顎前突)など幅広い治療に対応できます。
インビザライン治療で抜歯をするメリット・デメリット
インビザラインは、ワイヤー矯正と比較して痛みが少ないことから人気です。
しかし、抜歯が必要になると治療をためらう方もいるでしょう。ここでは、抜歯のメリットとデメリットをご紹介します。
インビザライン治療で抜歯するメリット
インビザラインで抜歯をするメリットは、以下のとおりです。
- 重度の叢生を治療できるようになる
- 口元の突出感が解消される
- 治療が早く終わる可能性がある
抜歯をした分、歯列にスペースを作れることが最大のメリットです。インビザラインにおいて、抜歯なしでは重度の歯の乱れを矯正できません。歯を移動できず、歯列に収まらないからです。
しかし、抜歯をすることで新たに生まれたスペースを活用して、乱れた歯並びを整えられます。前歯を後方に動かすことで、口元の突出を解消することもできるでしょう。
抜歯をしなかった場合、奥歯を後方に移動させてスペースを作る場合があります。歯列全体を動かすので治療期間が長くなることが多いですが、抜歯をしてスペースを作れば治療が早く終わる可能性があるでしょう。
抜歯のデメリット
抜歯のデメリットは、以下のとおりです。
- 健康な歯を失う
- 痛みや腫れが生じる
- 一時的に大きなすき間ができる
インビザラインでの抜歯では、健康な歯を抜くことがあります。抜歯は必須ではないため、治療計画や治療後のイメージを見て納得したうえで決断することが重要です。
どうしても抜歯を避けたい場合は、治療計画を立て直すことも可能なので、担当の歯科医師に相談しましょう。
インビザライン治療で抜歯をしたほうがよいケース
インビザライン矯正での抜歯は、必須ではありません。
しかし、矯正をするうえで抜歯をしないと治せないケースや、抜歯をしたほうがよいケースはあります。
歯を並べるスペースを確保できない
歯がきれいに歯列に並ぶためのスペースを確保できない場合、抜歯をしたほうがスムーズに治療できます。重度の歯列の乱れは、抜歯をしないと治療できない場合もあるでしょう。
歯並びの乱れが重度で大きなスペースが必要な症例は、抜歯をしたほうがよいといえます。
親知らずが生えている
インビザライン矯正では、親知らずがある場合は抜歯することが多いです。親知らずは隣の歯に圧力をかけて、矯正の妨げになるためです。
親知らずがまっすぐ生えずに、斜めや横向きに生えている場合、歯並びがもとに戻る後戻りを誘発します。汚れが溜まりやすく炎症や虫歯の原因にもなるため、前向きに抜歯を検討したほうがよいでしょう。
インビザライン治療で抜歯をしなくてもよいケース
インビザライン治療において、全員が抜歯を推奨されるわけではありません。抜歯をしなくても問題なく矯正できる場合もあります。
抜歯をせずにスペースを確保できる
歯を動かす際に必要なスペースがわずかな場合は、抜歯が不要です。抜歯によってあけられるスペースは約14mmですが、必要なスペースが14mm未満の場合は抜歯しなくてもよいでしょう。
抜歯しない場合のスペースを確保する方法は、以下のとおりです。
歯を削る
抜歯をせずに、IPRで対応する場合があります。IPRとは、歯の側面をわずかに削る処置です。
IPRでは歯1本あたり最大片側0.25mmを削るため、両側面を削れば合計0.5mmのスペースを作り出せます。歯への痛みや健康への影響はない範囲で削るため、安心してください。
歯列を外側に広げる
歯列を全体的に外側に広げることで、スペースを作って対応する場合もあります。マウスピースで歯に外側方向の力を加えることで、歯列の側方拡大が可能です。
奥歯の後方にスペースがある
奥歯のさらに後方に顎の骨がある方も、抜歯が不要になるかもしれません。奥歯を後ろに動かすことで、歯列の前側にスペースを作り出せるからです。
親知らずを抜歯した方も、奥歯を後ろに移動させてスペースを確保する場合があるでしょう。
しかし、顎の骨が小さい方や、奥歯の後ろに顎の骨がない方は行えません。
まとめ
今回は、インビザラインの抜歯について解説しました。
インビザラインは透明なマウスピースを使用した矯正で、目立たないうえに痛みが少ないことから人気の矯正法です。
しかし、抜歯が必要になるケースもあります。抜歯に悪いイメージがある方も多いかもしれませんが、抜歯をすることで重度の歯並びも治療できるようになります。