歯列矯正は、歯並びや噛み合わせなどの悩みや問題を解消できる治療です。主に、インビザラインなどのマウスピース矯正と、ワイヤー矯正があります。

どちらも専用の矯正装置を使用して歯並びを改善しますが「インビザラインとワイヤー矯正、どっちを選ぶべき？」「どんな違いがあるの？」など、疑問に思う方もいるでしょう。

今回は、インビザラインとワイヤー矯正の違いについて解説します。それぞれのメリットとデメリットもまとめているので、歯列矯正を検討している方はぜひ参考にしてください。

インビザラインとは？

インビザラインは、アメリカのアライン・テクノロジー社が提供するマウスピース矯正の一つです。インビザラインは、透明で目立ちにくいマウスピースを使用した矯正方法です。

インビザラインによる矯正治療の流れと、メリット・デメリットについて解説します。

インビザライン矯正治療の流れ

まず、口腔内の精密検査を受けます。口腔内の状態観察やレントゲン撮影をして、虫歯や歯周病の有無を確認するでしょう。

問題なければマウスピースの型を取ります。マウスピースが完成して届くまでに1か月程度かかります。マウスピースが届いたら、矯正治療を開始しましょう。

ご自宅で指定された順番どおりにマウスピースを装着し、1～2週間ごとにマウスピースを交換　して歯を徐々に移動させます。マウスピースの1日の装着時間の目安は、20〜22時間です。

矯正治療開始後は、歯の動きや口腔内の状態を確認するために1～2か月に1回ほど通院する必要あります。治療期間は、矯正する歯の本数や移動させる距離によって異なりますが、数か月～3年程度が一般的です。

歯の移動が完了したら、保定期間に入ります。矯正によって移動した歯には、もとの位置に戻ろうとする力が働くためです。

後戻りを防ぐために、保定期間中はリテーナー（保定装置）を装着します。リテーナーは基本的に食事と歯磨き以外の時間は装着しますが、徐々に装着時間は短くなるでしょう。保定期間にも個人差がありますが、一般的には約1～3年かかります。

インビザラインのメリット

インビザラインのメリットは、以下のとおりです。

目立ちにくい

透明で薄いマウスピースを使用するため、矯正装置が目立ちにくいです。矯正治療をしていることがわかりづらいため、口元の見た目を気にする必要がありません。

接客業や人前に出る仕事に従事している方でも取り入れやすい矯正治療です。インビザラインの最大のメリットといえるでしょう。

ご自身で取り外せる

ご自身で矯正装置を取り外せることもメリットといえます。食事の際はマウスピースを外すので、違和感なく食事を楽しめます。また、マウスピースを外して歯磨きできるため、口腔内を清潔に保ちやすいでしょう。

通院回数が少ない

通院回数が少ないことも、インビザラインのメリットです。インビザラインでは、ご自身でマウスピースを装着して歯を徐々に動かすため、歯科医院への通院は1～2か月に1回程度です。

ほかの矯正治療に比べて通院回数が少ないため、忙しい方でも受けやすいでしょう。

痛みや違和感が少ない

インビザラインは、矯正による痛みや違和感が少ないです。1枚のマウスピースで動かす歯の距離は最大0.25mmで、ワイヤー矯正と比べて短いためです。

軽度の力が均一にかかるため、痛みが少ないといえます。ブラケットやワイヤーなどの矯正装置が口腔内に当たる痛みもありません。

金属アレルギーでも治療できる

インビザラインは、金属アレルギーの方でも治療が可能です。インビザラインのマウスピースには金属が含まれないため、安心して治療を受けられるでしょう。

インビザラインのデメリット

インビザラインはメリットの多い治療ですが、デメリットも存在します。

治療結果は患者さまの管理に依存する

インビザラインの主なデメリットは、治療結果が患者さまの自己管理に依存することです。インビザラインではマウスピースを自由に取り外せますが、装着時間を守らなければ歯が計画どおりに移動しません。

1日のマウスピース装着時間の目安は20〜22時間ですが、ご自身でマウスピースを簡単に取り外せるため、装着時間が短くなることがあるでしょう。

治療期間が長くなる可能性がある

上述しましたが、インビザラインのマウスピースで動かす歯の距離は最大0.25mm程度です。1mm動かすだけでも4枚のマウスピースが必要になります。

マウスピースは1〜2週間に一度交換するので、1週間で交換しても1mm動かすのに1か月程度かかるのです。

ワイヤー矯正のほうが強い力をかけて歯を動かせるので、同じ症例を治療する場合、インビザラインのほうが治療期間が長くなる傾向にあります。

ワイヤー矯正とは？

ワイヤー矯正は、ワイヤーとブラケットとよばれる矯正装置を用いて歯を移動させる方法です。ワイヤー矯正は歴史のある矯正方法で、多くの歯科医院で導入されています。

ワイヤー矯正の流れと、メリット・デメリットを確認しましょう。

ワイヤー矯正治療の流れ

インビザラインと同様、まず口腔内の状態を観察し、虫歯や歯周病の有無を確認します。問題がなければ、レントゲン撮影や歯型の採取を行います。

歯の表面をクリーニングしてから、ブラケットを歯に取り付けるのが一般的です。歯の表面に汚れが残っていると、ブラケットが外れやすくなるためです。

ブラケットにワイヤーを通し、動かしたい方向に適切な力を加えて歯を移動させます。矯正期間は2〜3年程度で、1か月に1回ワイヤーの交換を歯科医院で行います。

歯の移動が完了したら、保定期間に入るでしょう。インビザラインと同様に、保定期間中はリテーナー（保定装置）を装着します。

ワイヤー矯正治療のメリット

ワイヤー矯正のメリットは、以下のとおりです。

適応症例が多い

ワイヤー矯正の最大のメリットは、適応可能な症例が多いことです。ワイヤー矯正は、大きく歯を動かす必要がある歯並びに適しています。

例えば、インビザラインは抜歯を伴う症例にはあまり適していませんが、ワイヤー矯正は大きく歯を動かせるので、抜歯を伴う症例にも対応できます。

自己管理の必要がない

矯正器具の取り外しが不要なため、自己管理の負担が少ないこともメリットでしょう。インビザラインのように矯正装置を取り外せる場合、自己管理を徹底しなければなりません。自己管理が不十分だと、矯正がうまく進まない可能性があるためです。

しかし、ワイヤー矯正の場合は歯科医師が1か月に1回ワイヤーの調整を行うため、自己管理の負担は軽減されます。

効率的に歯を動かせる

ワイヤー矯正は細かい調整をしやすいため、効率的に歯を動かせます。歯並びが大きく乱れており、複雑な歯の移動が必要な症例でも治療可能でしょう。

ワイヤー矯正治療のデメリット

ワイヤー矯正治療のデメリットは、以下のとおりです。

矯正装置が目立つ

ワイヤー矯正の矯正装置は、基本的に金属なので目立ちます。近年では白色や透明の目立ちにくいブラケット・ワイヤーも登場していますが、インビザラインの透明なマウスピースと比較すると目立つでしょう。

痛みや違和感が出やすい

歯が移動する際に痛みが生じやすいこともデメリットです。

しかし、常に痛みが続くわけではありません。ワイヤーを調整したあと2～3日は痛みを感じやすいですが、徐々に軽減します。

ブラケットやワイヤーが口腔内に当たって痛みや違和感が生じることもあり、悪化すると口内炎になる可能性があるでしょう。

口腔内を清潔に保ちにくい

ワイヤー矯正の装置は、食事や歯磨きの際に外せません。磨き残しがないようにブラッシングすることが難しいと感じる方が多いです。

口腔内を清潔に保てないと、虫歯や歯周病の原因となります。日々の丁寧な口腔ケアが非常に重要なのです。

通院回数が多い

1か月に1回はワイヤーの調整を行うため、歯科医院に通院する必要があります。インビザラインと比較すると、通院の頻度は高くなります。

忙しく頻繁に歯科医院を受診できない方には、大きなデメリットになるでしょう。

インビザラインとワイヤー矯正の違い

インビザラインとワイヤー矯正には、どちらにもメリットとデメリットがあります。どちらか一方が優れているとはいえません。

以下、インビザラインとワイヤー矯正の主な違いをまとめました。どちらの矯正方法を選ぶか悩まれている方は、ぜひ参考にしてください。

＜インビザラインとワイヤー矯正の違い＞

矯正方法	インビザライン	ワイヤー矯正
適応症例	対応できない症例がある	幅広い症例に対応できる
審美性	目立たない	目立ちやすい
取り外し	可能 （1日20〜22時間装着しなければならない）	不可能
通院頻度	1～2か月に1回程度	1か月に1回
痛みや違和感	少ない	強い

それぞれの特徴を理解し、ご自身のニーズに合った矯正方法を選択しましょう。

インビザラインとワイヤー矯正を検討するときのポイント

インビザラインとワイヤー矯正にはそれぞれ特徴がありますが、矯正方法を選ぶ際に考慮すべき大きな違いは2つです。

装置の目立ちやすさ

インビザラインとワイヤー矯正の大きな違いは、矯正装置の目立ちやすさです。矯正装置が目立たないことを重視するのであれば、インビザラインを選択するとよいでしょう。

ワイヤー矯正も目立ちにくい種類はありますが、一般的にはインビザラインのほうが審美性は優れています。矯正期間は1～2年程度と長いため、見た目も考慮すべき重要なポイントでしょう。

取り外しができるかどうか

矯正器具の取り外しが可能かどうかも考慮すべきです。

インビザラインはマウスピースの取り外しが可能ですが、毎日マウスピースをお手入れし、装着時間や交換時期をご自身で管理しなければなりません。自己管理を徹底できるのであれば、食事や歯磨きの際に取り外しができるインビザラインが適しているでしょう。

自己管理が難しいと感じる場合は、ワイヤー矯正を検討するとよいかもしれません。

まとめ

歯並びを改善する方法について、インビザラインとワイヤー矯正の概要や違いを解説しました。それぞれに特徴があり、どちらの矯正方法が適しているかは治療を受ける患者さまによって異なります。

重要なのは、それぞれの矯正方法の特徴を理解し、ご自身に合った治療を選択することです。歯列矯正を検討している方は、歯科医院でカウンセリングを受けるとよいでしょう。

理想の歯並びを手に入れるために、歯科医師と十分に相談し、納得したうえで最適な矯正方法を選択してください。