大人になってから歯列矯正を検討する方は多いです。「大人の歯列矯正にはどのような種類があるの?」「大人の歯列矯正にはどれくらいの費用がかかるの?」などの疑問をおもちの方もいるでしょう。
今回は、大人の歯列矯正の種類や特徴、費用について解説します。歯列矯正を検討中の方は、ぜひ最後までお読みください。
歯列矯正のメリット・デメリット
大人になってから歯並びが気になり始めたという方も多いでしょう。実際に、大人になってから歯列矯正を始める方は多いです。大人の歯列矯正には、メリットとデメリットがあります。
メリット
大人の歯列矯正のメリットは、以下のとおりです。
審美性が改善できる
歯列矯正により、歯並びがよくなるため、コンプレックスが改善できます。「歯並びが気になって、口を開けて笑えなかった」と感じていた方も、矯正後は自信をもてるでしょう。
虫歯や歯周病になるリスクが低くなる
歯と歯が重なりガタガタしている部分は歯磨きがしにくく、虫歯や歯周病の原因になりやすいです。
しかし、歯列矯正後は歯磨きがしやすくなるため、口腔内を清潔に保てます。口腔内を清潔に保てることで、虫歯や歯周病になるリスクが低くなるでしょう。
噛み合わせを改善できる
噛み合わせを改善できるという点もメリットです。噛み合わせが悪いと、顎関節症や頭痛、肩こりの原因になります。歯列矯正で噛み合わせを改善することで、症状がよくなるケースも多いのです。
治療計画を立てやすい
大人の歯列矯正は、成長過程のこどもの矯正と違い、顎の成長や歯の生えかわりを考える必要がありません。そのため、治療計画を立てやすいのです。
デメリット
一方で大人の歯列矯正のデメリットは、以下のとおりです。
費用が高い
一般的に矯正治療は、保険が適用されません。自由診療になるため、費用は高いです。費用が高いことは、こどもの矯正も変わりありません。
しかし、大人になって矯正をする場合はご自身で支払うケースが多いため、費用が原因で治療を諦める方も少なくないのです。
治療中の見た目が気になる
矯正方法によっては、見た目に影響が出るものもあります。例えば、表側矯正の場合、歯の表側に矯正装置を装着するため目立つでしょう。そのため、接客業などの人と話す機会が多い職業の方にとってはデメリットといえます。
矯正治療中は虫歯や歯周病になりやすい
矯正治療中は、矯正治療前後に比べて虫歯や歯周病になりやすいです。装置が取り外せない矯正方法の場合、装置のすき間に汚れが残りやすいため、しっかりと歯磨きをしないと虫歯や歯周病の原因になるでしょう。
仕事が治療に影響することもある
矯正治療中は、お口の状態を確認するために、定期的に歯科医院を受診する必要があります。「仕事があるため歯科医院に通えない」「残業が多く歯科医院に通えない」など、仕事が治療に影響するケースもあるでしょう。
大人の歯列矯正の種類
大人の歯列矯正は大きく分けて、以下の2つがあります。
- 部分矯正
- 全体矯正
部分矯正は、気になる部分のみを矯正する治療法で、軽度〜中度の歯並びの矯正に適応されます。部分矯正の場合、噛み合わせの改善はできません。
一方で全体矯正は、全体の歯並びを矯正する治療法です。歯並びだけでなく噛み合わせも改善できます。
次に、具体的な矯正方法についてみていきましょう。矯正の種類は、以下の4つです。
表側矯正
表側矯正とは、ワイヤー矯正の一種で、ブラケットとワイヤーを歯の表側に装着するオーソドックスな治療法です。
一般的にブラケットは金属製のものを使用します。見た目が気になる方や金属アレルギーの方には、プラスチック製やセラミック製のブラケットを使用することもあるでしょう。
メリット
表側矯正のメリットは、以下のとおりです。
- オーソドックスな治療法で実績がある
- 適応範囲が広い
- 舌が装置に当たらない
表側矯正は、オーソドックスな治療法で実績があります。重度の歯並びや骨格が関係している難しい症例にも適応できるため、ほかの矯正方法では治療が難しいと判断された場合でも、表側矯正であれば治療できる可能性が高いでしょう。
装置が歯の表側についているため、舌が装置にあたる心配はありません。舌が傷つくことや、発音に影響が出ることは少ないでしょう。
デメリット
表側矯正のデメリットは、以下のとおりです。
- 目立つ
- 食べ物のカスが詰まりやすい
- 痛みが出やすい
表側矯正は、歯の表側に装置を装着するため目立ちやすく、また食事の際、装置に食べカスが詰まりやすいです。
また、ほかのワイヤー矯正にもいえることですが、ワイヤー矯正はマウスピース矯正よりも強い力を加えて歯を動かすため、痛みが出やすいでしょう。特に、調整して数日は痛みが出やすく、食事がつらいと感じる方も珍しくありません。一般的に調整から数日経つと、痛みは落ち着きます。
裏側矯正
裏側矯正とは、ワイヤー矯正の一種で、ブラケットとワイヤーを歯の裏側に装着して矯正する治療法です。舌側に矯正装置を装着するため、舌側矯正と呼ばれることもあります。
メリット
裏側矯正のメリットは、以下のとおりです。
- 目立たない
- 表側矯正に比べて虫歯になりにくい
- 衝撃を受けた際に装置でけがをしにくい
裏側矯正は、歯の裏側に装置を装着するため、目立ちません。「目立つのが気になる」ことが理由で矯正を諦めていた方でも、治療を受けやすいでしょう。
また、表側矯正に比べて虫歯になりにくい点もメリットといえます。裏側矯正の場合、抗菌作用がある唾液に常に触れている状態になるため、表側矯正に比べて虫歯になりにくいのです。
装置が歯の裏側についていることで、外部から思いがけない衝撃を受けたときも、装置で口腔内を傷つけるリスクも少ないでしょう。
デメリット
裏側矯正のデメリットは、以下のとおりです。
- 歯科医師の高度な技術が必要である
- 費用が高い
- 表側矯正に比べて適応範囲が狭い
- 発音しづらい
- 表側矯正に比べて治療期間が長い
裏側矯正は、表側矯正よりも難易度が高い治療法のため、歯科医師の高い技術が必要です。そのため矯正の豊富な知識と経験がある歯科医師でなければ治療ができません。
また、裏側矯正の費用は、表側矯正に比べると高いです。表側矯正に比べて、歯に加える力を弱める必要があるため、適応範囲が限られます。
さらに、歯の裏側に装置がついているため、舌が装置にあたり発音しづらくなることもあります。表側矯正と違った歯の動かし方をするケースが多いため、治療期間が長くなる可能性も高いでしょう。
ハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正もワイヤー矯正の一種で、上の歯を裏側矯正、下の歯を表側矯正で治療する方法です。
メリット
ハーフリンガル矯正のメリットは、以下のとおりです。
- 表側矯正に比べて目立ちにくい
- 裏側矯正に比べて費用を抑えられる
- 裏側矯正に比べて発音に影響が出にくい
上の歯を裏側矯正にすることで目立ちにくく、上下を裏側矯正にするよりも費用を抑えられます。また、下の歯の表側に装置がついていることで、裏側矯正よりも発音に影響が出にくいです。
デメリット
ハーフリンガル矯正のデメリットは、以下のとおりです。
- 表側矯正に比べて費用が高い
- 表側矯正に比べて治療期間が長い
裏側矯正よりは費用を抑えられますが、表側矯正に比べると費用は高いです。また、上の歯が裏側矯正のため、上下を表側矯正にするよりも治療期間が長くなります。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は、マウスピース装置を使用して歯を動かす治療法です。
メリット
マウスピース矯正のメリットは、以下のとおりです。
- 目立たない
- 取り外しができる
- 痛みが少ない
- 金属アレルギーの心配がない
マウスピースは、薄い透明の装置です。そのため、装置をつけていることが目立ちません。見た目を気にせず矯正ができる点は大きなメリットといえるでしょう。また、マウスピースは取り外しができるため、ふだんどおりに食事ができます。
痛みが少ない点もメリットといえるでしょう。マウスピース矯正は、マウスピースを装着して弱い力で少しずつ歯を動かしていくため、痛みが少ないのです。装置に金属を使用していないため、金属アレルギーの心配もありません。
デメリット
マウスピース矯正のデメリットは、以下のとおりです。
- マウスピースの装着時間を守らなければならない
- 正しく装着しなければならない
- ワイヤー矯正に比べて適応範囲が限られる
マウスピース矯正は、1日20〜22時間以上、マウスピースを正しく装着する必要があります。装着時間が短い場合や、正しく装着できていない場合は、計画どおりに歯が動きません。計画どおりに歯が動かないと、治療期間が延びる可能性もあるでしょう。
また、マウスピース矯正は軽度〜中度の歯並びに適応されます。ワイヤー矯正に比べて適応範囲が限られることはデメリットといえるでしょう。
大人の歯列矯正の費用
大人の歯列矯正にかかる費用の目安は、以下のとおりです。
<大人の歯列矯正の費用の目安>
全体矯正 | 部分矯正 | |
表側矯正 | 600,000〜1,300,000円 | 300,000〜600,000円 |
裏側矯正 | 1,000,000〜1,700,000円 | 400,000〜700,000円 |
ハーフリンガル矯正 | 800,000〜1,500,000円 | 350,000〜650,000円 |
マウスピース矯正 | 600,000〜1,000,000円 | 100,000〜400,000円 |
一般的に、大人の歯列矯正は保険が適用されません。自費診療のため、歯科医院によって費用は異なります。さらに、上記の費用に加え、精密検査料・調整料・リテーナー代などが別途で必要になるでしょう。
矯正方法を選ぶときのポイント
上述のとおり、矯正方法にはいくつか種類があります。「どの矯正方法がいいの?」と悩む方もいるでしょう。
矯正方法を選ぶときのポイントは、以下の4つです。
費用は予算内か
矯正治療には高額な費用がかかります。上述した費用に加えて、精密検査料や調整料などが別途で必要になることも考慮して、矯正方法を検討することが重要です。
歯科医院によって費用は異なります。歯科医院によってはトータルフィー制度を採用しているところもあるでしょう。予算オーバーして治療を続けられなくなるトラブルを回避するためにも、事前に費用を確認することが重要といえます。
適応症例か
上述のとおり、矯正方法によって適応症例は異なります。表側矯正であれば幅広い症例に適応できますが、マウスピース矯正で治療できる症例は軽度〜中度のもののみです。歯を大きく動かす必要がある症例や、骨格が関係する症例は、適応外となるでしょう。
自己管理ができるか
マウスピース矯正は自己管理が必要です。マウスピース矯正では、マウスピースを1日20〜22時間以上装着する必要があります。装着時間を守らないと、計画どおりに歯が動きません。
自己管理ができない場合は、装置を歯に装着するタイプの矯正方法を選択したほうがよいでしょう。
矯正治療で最も重視するものは何か
上述のとおり、矯正方法ごとにメリットとデメリットがあります。希望をすべてかなえるのは難しい場合もあるため、矯正治療のなかで最も重視するものは何かを考えたうえで選択しましょう。
例えば「目立たない矯正方法がいい」「費用を抑えたい」「噛み合わせも改善したい」など、重視することは人によって異なります。歯科医師に相談して、ご自身に合った矯正方法を選択しましょう。
まとめ
今回は、大人の歯列矯正の種類や特徴、費用について解説しました。
大人の歯列矯正にはいくつか種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。また、矯正方法によって適応症例や費用、見た目なども大きく異なるのです。それぞれの特徴やメリット・デメリットを踏まえたうえで、ご自身に合った矯正方法を選択しましょう。
また、歯並びによっては、希望する方法では治療ができない場合もあります。希望している方法で治療ができるのか、またご自身の歯並びに適した矯正方法はどれなのか、一度歯科医師に相談するとよいでしょう。