インビザライン矯正は、1997年にアメリカで開発されたマウスピース型の歯科矯正治療法の一つです。日本では2006年から治療が開始されました。
従来のワイヤー矯正と比べて器具が目立ちにくく、痛みが少ないことが特徴とされています。痛みの感じ方には個人差があるため、痛みや違和感を感じる方もいれば、逆に痛みを感じない方もいます。
インビザライン矯正では、どんな痛みがいつまで続くのでしょうか。痛みの原因と対処法を知ることで、過度に不安にならず前向きに治療に取り組めるようになるでしょう。
今回は、インビザライン矯正中の痛みについて、原因と対処法を詳しく解説します。
インビザライン矯正中は痛みがあるの?
インビザライン矯正を検討している方で、実際に痛みがあるのか、どの程度の痛みなのかが気になっている方は多いでしょう。
インビザライン矯正は、わずかに形の異なるマウスピース(アライナー)を1〜2週間に1回取り替えることで、少しずつ歯を動かしていく矯正法です。歯を動かすために力をかけるので、最初は痛みや違和感を覚える方もいます。
マウスピースによって締め付けられる圧迫感や違和感を覚えたり、マウスピースを取り外すときに痛みを感じたりと、人によって感じ方は様々です。
ワイヤー矯正とは異なり、食事のタイミング等で一定時間外せることや、一度に強い矯正力がかからないことから、中断するほどの痛みにつながることは少ない治療法といえるでしょう。
また、痛みがあっても数日経てば改善するケースがほとんどです。痛みを感じない方も、少なからずいらっしゃいます。
痛みがない場合、矯正の効果がないのではと不安に思うかもしれませんが、効果に問題はありません。
インビザライン矯正中に痛みを感じる原因
インビザライン矯正中に痛みを感じる原因は、以下の通りです。
- マウスピースによる圧迫
- 矯正した歯が元に戻っている
- アタッチメントが引っかかる
- 新しいマウスピースに慣れていない
- ゴムかけによる痛み
- 歯根膜が過敏になっている
- 口内が傷ついている
どのケースでも我慢しすぎず、強い痛みが1週間以上続く場合は歯科に相談しましょう。一つずつ詳しく解説していきます。
マウスピースによる圧迫
矯正をはじめたばかりの時期は、マウスピースが歯全体を圧迫している感覚に慣れていないため、違和感や痛みを覚えることが多いです。矯正治療が原因で、特に問題がある痛みではないので、心配する必要はありません。
矯正した歯が元に戻っている
マウスピースの装着時間が規定より短い場合や、正しく装着できていなかった場合、歯が元に戻ろうとすることで痛みが出ることがあります。マウスピースを正しく装着し、規定の装着時間を守ることが非常に重要です。
アタッチメントが引っかかる
アタッチメントとは、マウスピースと歯を密着させて矯正力を高めるために、歯の表面に取り付ける突起です。アタッチメントがあることで、マウスピースがより窮屈に感じて痛みを感じることがあります。着脱時にひっかかって痛みを引き起こすこともあるでしょう。
食事中はマウスピースを外すため、アタッチメントが頬の内側に当たって痛むケースもあります。
新しいマウスピースに慣れていない
インビザライン矯正では、1〜2週間に1回、新しいマウスピースに交換します。新しいマウスピースは現状の歯並びとのずれが大きいので、痛みを感じやすいです。
交換後2〜3日程度で慣れて痛みは落ち着くでしょう。
ゴムかけによる痛み
インビザライン矯正中は、上下の歯にゴムかけをすることがあります。ゴムかけは、上下の歯のかみ合わせやズレを改善させるために行われます。
マウスピースによる矯正の力に加えて、ゴムで引っ張る力が加えられるため、違和感や痛みを覚えるかもしれません。
歯根膜が過敏になっている
歯根膜とは、歯の根っこと骨の間にある薄い膜のことです。
インビザライン矯正をはじめたばかりの時期や、新しいマウスピースに交換した時は、歯に強い力がかかって歯根膜が過敏になっています。歯根膜が過敏になることで一時的に炎症が起こり、知覚過敏のような痛みを感じたり、食事の際に痛みを感じる場合があります。
口内が傷ついている
インビザライン矯正では、マウスピースの着脱を何度も繰り返します。特に矯正をはじめたばかりの頃はマウスピースの着脱に慣れていないでしょう。爪やマウスピースで口内を傷つけて、痛みにつながっていることがあります。
インビザライン矯正中の痛みはどれくらい続く?
インビザライン矯正中に痛みを感じると、どれくらい続くのか、いつまで我慢すればいいのかがわからず不安になる方も多いでしょう。個人差がありますが、長くは続かないことがほとんどです。
痛みのピークは、初めてマウスピースを装着したときと、マウスピースを交換したときとされています。2〜3日程度で落ち着き、徐々に痛みは改善していきます。
インビザライン矯正における痛みは、長くても1週間程度でおさまることがほとんどです。1週間以上痛みが続く場合や、我慢できないほど痛む場合は、何らかのトラブルが起こっている可能性があるため歯科に相談しましょう。
マウスピースやアタッチメントで口内が傷ついた場合や、口内炎等の炎症が起きて痛みが出ている場合も、我慢せずに歯科に相談してください。
インビザライン矯正中に痛みを感じる場合の対処法
インビザライン矯正で痛みを感じた時は、どうすれば良いのでしょうか。インビザライン矯正で痛みを感じる場合の対処法は、以下の通りです。
- 一つ前のマウスピースを使う
- マウスピースやアタッチメントの形を整える
- 痛み止めを飲む
- リムーバーを使用する
- 歯科用ワックスを使う
- 柔らかく歯の負担にならないものを食べる
それぞれ詳しく解説していきます。
一つ前のマウスピースを使う
新しいマウスピースを装着した時の痛みは、数日で改善されるのが一般的です。
痛みが続く場合は、一つ前のマウスピースに戻して様子を見てみましょう。前のマウスピースの装着時間が短く、十分に歯が動いていないことが原因で痛んでいる場合があります。
一つ前のマウスピースでの歯の移動を完了させれば、痛みが軽減することがあります。
マウスピースやアタッチメントの形を整える
マウスピースやアタッチメントに尖った部分があり、着脱時やマウスピースを外している間に口内を傷つけてしまう場合は、調整が必要です。自分で調整することは難しいので、歯科に相談しましょう。
痛み止めを飲む
インビザライン矯正中の痛みが強い場合は、痛み止めを飲むことも可能です。痛みを我慢し続けることはストレスになるため、痛み止めを上手に使って乗り切りましょう。
可能であれば、病院で処方された痛み止めを服用してください。市販薬のなかには、歯の移動を遅らせる成分が入っている可能性があります。一時的に飲むだけなら大きな問題にはなりませんが、常用するのは避けましょう。
リムーバーを使用する
リムーバーとは、マウスピースを取り外しやすくする補助器具です。マウスピースは歯に密着しているため、最初は取り外しが難しく、無理に力をかけて口内を傷つけてしまう事があります。
リムーバーを使うことで余計な力をかけずに、スムーズに取り外せるようになるでしょう。
歯科用ワックスを使う
マウスピースを取り外した際、アタッチメントが舌や頬に当たって痛い方は、歯科用ワックスを使用すると良いかもしれません。歯科用ワックスは粘土のような保護材で、飲み込んでも影響のない素材で作られています。
歯科用ワックスでアタッチメントを覆うことで、痛みが改善されるでしょう。
柔らかく歯の負担にならないものを食べる
インビザライン矯正をはじめたばかりの時や、新しいマウスピースに交換した時は、歯に強い力がかかって歯根膜が過敏になっています。痛みが出ている時期は硬い食べ物や噛み切りにくい物、ガム等の粘着性の高い食べ物は避けてください。
おかゆやうどんのような、柔らかく歯の負担にならない食べ物を選ぶと良いでしょう。
まとめ
インビザライン矯正を検討する際、痛みがどのくらい出るのかは気になる方が多いでしょう。ワイヤー矯正に比べて痛みが少ない治療法とはいえ、歯を動かすので痛みや違和感を覚える方がいることは事実です。
基本的には、痛みが長期間続くことはありません。2〜3日程度で落ち着くことが多いので、落ち着いて対処しましょう。
強い痛みが1週間以上続く場合などは、我慢せずに歯科医師に相談してください。