顎が小さい人の中には「顎の大きさを改善する治療にはどのようなものがあるの?」「顎が小さいとどのような問題があるの?」という疑問をおもちの方がいるかもしれません。
顎が小さいとさまざまなリスクがあるため、治療をすすめられたことがある方もいるでしょう。
今回は、顎が小さい人に起こりやすい問題や治療方法について解説します。顎が小さい大人が矯正をするメリット・デメリットについても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
顎が小さい大人はどんな問題を抱えやすい?
顎が小さい大人は、以下のようなトラブルを抱えやすいといえるでしょう。
- 歯並びが乱れやすい
- 虫歯や歯周病になりやすい
- いびきをかきやすい
一つひとつ詳しく解説します。
歯並びが乱れやすい
顎が小さいと、歯並びに影響を与えることがあります。子どもの頃は歯並びが良かったのに、大人になってから歯並びが乱れるケースもあるでしょう。
永久歯は乳歯よりも大きく、歯の大きさに対して顎が小さいと、歯が歯列におさまらなくなり歯並びが乱れる原因になるのです。
顎が小さい場合に現れやすい症状は、以下のようなものです。
- 叢生(そうせい)
- 八重歯
- 出っ歯
叢生とは歯並びがガタガタの状態で、歯同士が重なり合っていたり、凹凸があったりすることを指します。顎が小さいことが原因で歯が並ぶスペースが不足すると、叢生や八重歯などの症状が現れやすくなります。
また、上顎よりも下顎が小さいと上下の顎のバランスが悪くなり、上の歯が前に突出して見えることもあるでしょう。
虫歯や歯周病になりやすい
上述のとおり、顎が小さいと歯並びが悪くなる原因になります。歯並びが悪いと、虫歯や歯周病になるリスクが高まるでしょう。
特に叢生の場合は、歯が重なり合う部分に汚れが溜まりやすく、歯磨きがしづらいことから、磨き残しも増えやすいです。磨き残しがあると細菌が増殖し、虫歯や歯周病などのトラブルが起こりやすいといえるでしょう。
いびきをかきやすい
下顎が小さい方はいびきをかきやすいといわれています。
下顎が小さく、後退していると、舌の付け根が下がり、気管が狭くなる可能性が高いです。すると睡眠中のいびきがひどくなったり、睡眠時に一時的に呼吸が停止する病気である睡眠時無呼吸症候群を起こしたりすることがあります。
顎が小さくなる原因
顎が小さくなる原因には、おもに以下の2つが挙げられます。
- 遺伝
- 食生活
それぞれ解説します。
遺伝
顎の骨などの骨格は遺伝することがあります。両親の顎が小さい場合、お子さまの顎も小さくなることがあるのです。
食生活
骨にはある程度の刺激が必要で、刺激が加わることで発達が促されるといわれています。顎の骨も同様で、顎の骨が成長する時期に柔らかい食べ物ばかりを食べていたり、咀嚼の回数が極端に少なかったりすると、顎の骨が十分に発達せず、顎が小さくなるリスクが高まります。
そのため、お子さまにはしっかり噛んで食べる習慣を身につけさせたり、根菜類などの噛みごたえのある食材を取り入れたりする必要があるでしょう。
顎が小さい場合の治療方法
顎が小さい場合の治療方法には、以下のようなものがあります。
- 歯列矯正
- 外科的治療
それぞれ解説します。
歯列矯正
小さい顎を改善する治療法のひとつが歯列矯正です。ワイヤー矯正やマウスピース矯正などで矯正治療を行い、噛み合わせや上下の顎のバランスを整えます。上下の顎のずれがあまり大きくない場合は、歯列矯正で改善できることがあるのです。
また、下顎が小さく、後退している場合にはアンカースクリューを併用することもあります。
アンカースクリューとは、チタン製のネジのことです。アンカースクリューを顎の骨に埋め込み、そこを固定源として歯を動かします。歯の代わりに顎の骨を固定源とすることで、より強い力で効率的に歯を動かす効果が期待できます。
ほかにも、床矯正と呼ばれる矯正方法もあります。床矯正とは、プレート型の装置を使って顎の骨を広げる治療です。成長途中にある子どもの矯正でよく使用される装置ですが、大人でも顎の状態によっては使用できることもあります。
外科的治療
矯正治療だけでは改善されないケースもあります。その場合は矯正治療に併せて、外科的治療を行うことがあります。骨切り術と呼ばれる顎の骨を切る手術を行い、正しい位置に顎の骨を移動させ、噛み合わせを改善させます。
顎が小さい大人の矯正では抜歯が必要?
顎が小さく、歯が並ぶためのスペースが少ないことで歯列が乱れている場合は、抜歯をする可能性が高いです。抜歯をして歯を動かすスペースを確保し、歯並びを整えます。
ただし、顎が後退していることで顎が小さく見えている場合は、抜歯が必要ないケースもあります。
顎が小さい大人が矯正をするメリット
顎が小さい大人が矯正をするメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 顎関節症を予防・改善できる
- 発音しやすくなる
- 虫歯や歯周病のリスクが減る
- しっかり咀嚼できるようになる
それぞれ解説します。
顎関節症を予防・改善できる
顎が小さい人は上下の顎のバランスが悪いため、噛み合わせも悪くなっているというケースが多いです。噛み合わせが悪い状態を長期間放置すると、顎の関節に負担がかかりやすく、顎関節症を起こすリスクがあります。
顎関節症になると、口を開くときに痛みがある・口を大きく開きにくい・食べ物が噛みにくいなどの症状が現れることがあります。
矯正で噛み合わせを整えることで、顎関節への負担を減らすことができ、顎関節症の予防と改善につながるでしょう。
発音しやすくなる
顎が小さいと、口内のスペースが不足しやすく、舌の動きが制限されます。舌をうまく動かせないことで発音が不明瞭になったり、舌足らずな話し方になったりする傾向があります。
矯正で顎を拡大し、スペースを確保できれば、発音しやすくなるでしょう。
虫歯や歯周病のリスクが減る
矯正治療で歯のガタつきや八重歯などが改善されれば、歯磨きを行いやすくなります。口内を清潔に保ちやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクが減るでしょう。
しっかり咀嚼できるようになる
矯正治療によって噛み合わせが改善されると、しっかりと咀嚼ができるようになります。しっかり咀嚼できることで消化器官への負担も軽減できるでしょう。
また、一部の歯だけに負担がかかりすぎることなくバランスよく歯を使えるようになるため、必要以上に歯を磨耗することなく、長くご自身の歯を使える可能性が高くなります。
顎が小さい大人が矯正をするデメリット
顎が小さい大人が矯正をするデメリットには、以下のようなものが挙げられます。
- 抜歯が必要になることがある
- 矯正装置が目立つ場合がある
- 矯正中は虫歯や歯周病のリスクが高まる
それぞれ解説します。
抜歯が必要になることがある
顎が小さいと歯が並ぶためのスペースが不足していることが多いため、スペースを確保するために、抜歯をしなければいけないことが多いです。
抜歯を勧められているにも関わらず非抜歯で治療を進めると、思うような仕上がりにならなかったり、矯正終了後に歯が元の位置に戻ってしまう後戻りが起こったりする可能性が高まります。
大切な歯を抜くことに抵抗がある方は多いかもしれませんが、このようなリスクがあることを理解しておきましょう。
矯正装置が目立つ場合がある
矯正装置の種類によっては、目立つ場合があります。とくに、ブラケットとワイヤーが歯の表側につく表側矯正の場合は、口を開けたときに装置が目立ちやすく、口元の突出感があります。
「目立ちにくい方法で矯正をしたい」という方は、歯の裏側に装置をつける裏側矯正や、表側矯正でも白色のワイヤーやブラケットを選ぶとよいでしょう。
マウスピース矯正では透明で目立ちにくい装置を使用しますが、症状によってはマウスピース矯正が適さないと判断される場合もあります。
矯正中は虫歯や歯周病のリスクが高まる
ワイヤー矯正の装置はご自身で取り外すことができないため、歯磨きがしにくく、装置と歯の間に汚れが溜まると虫歯や歯周病のリスクが高まります。
矯正中に虫歯や歯周病などのトラブルが発生すると、矯正治療を中断し、虫歯や歯周病の治療を優先させなければいけないこともあるでしょう。結果として治療期間が延びるリスクも考えられます。
そのため、矯正治療中は歯ブラシだけでなく、ワンタフトブラシや歯間ブラシ、デンタルフロスを使って、矯正器具の周囲に付着した汚れもしっかり落とす必要があります。歯科医院で定期的にクリーニングを受けるのもよいでしょう。
まとめ
顎が小さいと、歯並びが乱れやすかったり、それによって虫歯や歯周病になりやすかったりします。また、いびきの原因にもなるでしょう。
大人の小さな顎を改善する治療には歯科矯正や外科的治療などの選択肢があります。小さな顎を矯正することで、虫歯や歯周病になるリスクが低くなり、また顎関節症の予防・改善につながるでしょう。発音が改善されるというメリットもあります。
一方で、抜歯が必要になる可能性がある点はデメリットといえるでしょう。メリットとデメリットの両方を理解したうえで、治療を行うかどうか検討してください。